将棋界に革命を起こせ!角将棋! (ナルヒラ)
今回は新たな将棋の楽しみ方のご提案です。
みなさんは「将棋」をご存知だろうか?
さながら、戦国時代の軍師のように緻密な戦略を立て、持ち駒となる自陣の従順な20個の駒を駆使し、敵の鋭い攻撃をかいくぐり、時にはその儚い命を犠牲にしながらも敵の王を討つ。
そんなロマン溢れる日本の合戦を模して古来より多くの人に楽しまれてきたボードゲーム、
それが「将棋」だ。
私も将棋が好きでよくやっているのだが、周囲の人達と将棋をしようと思っても意外と
「将棋をやったことが無い」という人が多い。
なぜやったことがないのかその理由を聞くと「駒の動きを覚えるのが面倒くさい」とのことである。
駒の動きを知らないから将棋をしない、これは非常にもったいないことだ。
一人でも多くの人に将棋の楽しさを知ってもらいたい。
そう思って今回は誰でも楽しめるルールを追加した新たな将棋、その名も「角将棋」をここに提案したい。
角将棋のルール
①敵の「王」をとったプレイヤーの勝ちとする。
②「王」以外の駒は全て「角」とする。
③「角」が敵陣に入っても成らないものとする。
④取った「角」を自分の駒として使用することはできないこととする。 以上の4点である。
ちなみに、なぜ「角」限定にしたのかというと、使える駒を限定するにあたって「歩」「王」は論外。
「金」「銀」では永久に決着がつかず、「桂馬」はトリッキーすぎて扱いが難しい。
「飛車」は移動範囲が広いものの動きが単調で面白みにかけるし、「香車」にいたっては100%先攻の勝ちとなるため、消去法で「角」になった次第である。
それでは早速、角将棋開始と言いたいところだが、常識的に考えて一人暮らしの大学生の部屋に「角」の駒が38枚もあるわけがないので、まずは「角」を38枚集める段階から始める。
とりあえず実家に連絡し、尽きかけていた地元のうまいお米や食べ物を送ってもらうのと同時に将棋の駒を送ってもらえるようにお願いした。
そして数日後
お米や地元の食べ物と共に
クール宅急便でキンキンに冷えた将棋の駒が送られてきた。
その中に母からの手紙も入っていた。
「将棋の駒は、香車が一個行方不明です(汗)」と書かれていたが今回必要なのは「角」のみなのでセーフ。
これで残りの必要な「角」の数は36枚。
もう「角」を手に入れられるつては無いので、ここからは「角」を作成することに。
ホームセンターにやって来た。
木材、のこぎり、ニス、ヤスリ、筆ペン、はけを購入。
合計で約3000円、確かに手痛い出費。
角の型を取って切り出す。
ヤスリで磨いて「角」の角を取り、駒に「角行」と文字を書き、ニスを塗る。
ニスも筆ペンのインクも水性なのでインクがにじんで書きづらい。
4時間かかって大量の「角」が完成。
ちなみに今回の将棋では駒の動いた軌跡を横列・縦列・駒名の順に表示する。
上の写真では「歩」がひとつ上に進行したので 7六歩 となる。
盤上に駒を並べて…
角将棋開始!
先攻、友人の一手目。 3 七 角 !
早くも王手!
このピンチをどう切り抜けるのか…いざ。
3 七 角 !
目には目を、歯には歯を、3七角には3七角を。
開始早々のピンチを難なく乗り越えたものの、友人の二手目はまたもや3七角 またもや王手。
対局前からなんとなく予想はしていたが、どうやら角将棋は1つ「角」が取られると
そこに向かって四方八方から敵味方の「角」が乱れ飛ぶという、合戦よりもむしろ雪合戦に近いゲームであると言える。
永久機関のように3七角が打ち合いが続き、次も3七角かと考えていたのだが…おや?
現在の状況を見てもらいたい。
そう、現時点では私の「角」の中には3七角に打てる「角」が存在しない。
友人の打った3七角は王手であるため、六手目にして早くも敗北を覚悟したのだが、よくよく考えれば「王」を動かせばいいだけの話。
私の一手は5八王。
「角」をどう動かすかを考えるあまり「王」も動かせるということを忘れていた。危ない。
この後も迫り来る「角」を「角」で打ち払い、隙あらば「角」で相手の「王」狙うという「角」を「角」で洗う壮絶な角弾戦が繰り広げられた。
そうこうしているうちに盤上の「角」もみるみる減っていき、行動可能範囲もどんどん減っていく。
それに伴い「本当に決着が着くのか?」という疑問も出始めた。
戦いは進み、とにかく敵の駒を減らそうと私の3五王の一手で敵の「角」を取る。
…
…お気づきだろうか
そう、敗北である。
私の凡ミスによりあっけない幕切れとなってしまった。計51手。
この後も何度か対局をしたが、どちらかがよっぽどのミスをしない限り決着が着かないことが分かってきた。
よって、ここに勝敗をつけるための新ルールを追加する。
⑤『ルール③「角」は敵陣に入っても成らない』を無効とし、「角」が敵陣に入ると一般のルールと同様に「龍馬」に成ることにする。
⑥100手で決着が着かなければ、残っている「角」の数が多い方を勝ちとする。以上の2点。
ちなみに「龍馬」の動き方は…
「角」動きに上下左右への1マスの動きを追加した動きとなる。
「角」の裏面に大量に「龍馬」を書き込んだ。
ルールを変更し勝敗が着くようになったが、せっかくなら強い人と戦ってみたい。
そこで、将棋部に戦いを挑んできた。
翌日、将棋部の部室にて
私
「突然すみません…ちょっとお時間よろしいでしょうか?」
将棋部の主将さん
「はい、何でしょうか?」
明らかに怪しんでいる様子の主将さん。
私
「ウェブサイトで使う写真を撮りたいのでよろしければ撮影の協力していただきたいのですが…」
将棋部の主将さん
「いいですよ。」
快く快諾していただき、部室に入らせてもらう。
私
「僕と一局対戦してもらってもよろしいでしょうか?その様子をサイトで使わせていただきたいので」
将棋部の主将さん
「分かりました。一局対戦すればいいんですね?」
そして本題へ
私
「ありがとうございます!今回の企画は「王」以外の駒が全て「角」の状態で将棋をするので、この駒を使っての対戦をお願いします。(計38枚の「角」をジャラジャラと出しながら)」
将棋部の主将さん
「…(苦笑)」
棋譜(戦いの記録)をつけてもらうことをお願いしつつ、一通りのルールを説明し、
角将棋開始!
先攻、私の一手目。
7 三 角 王手!
本来の将棋では絶対にありえない「初手での王手」がさらなる苦笑いを呼ぶ。
主将さんの一手目。
7 三 角!
前回の対戦と同じように、一点に向かって他の「角」が突撃する。
4 三 角! ぺちっ
4 三 角! パシィィッ!
6 三 角! ぺちっ
6 三 角! パシィィッ!
将棋部の「角」を打つ音は美しい!
少しづつ「角」の数も減ってきた。
あまりにも特殊なルールのため、逐一ルールを確認しながら戦いが続く。
1 八 角! ぺしっ
4 七 角! パシィィッ!
2 三 角! ぺしっ
6 九 角! パシィィッ!
…
…
…
…
「ま、参りました…」
衝撃の突然死。一体何が起きたのか。
下のリプレイをご覧いただきたい。手前が私の「王」だ。
この写真の状態で主将さんが6 九 角を打つ。
すると、「龍馬」に成った「角」によって王手となる。
そして、4 七にある龍馬の存在が「王」の退路を見事に断ち、「詰み」となるのである。
あまりにも鮮やかに「王」を取られてしまった。
もしかしたら、角将棋なら将棋部にも勝てるのではないか、という淡い希望もたったの22手で打ち砕かれてしまった。
やはり、将棋部は強い。
今後はもっとルールや定石を洗練させていき、角将棋の普及に努めたい。
そんなことを帰り道にギョーザを食べながら思うのだった。
ピエロと墓荒らしにご挨拶