徹底考察!「ぐりとぐら」

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徹底考察!「ぐりとぐら」 (ニシカゲ)


みなさんは『ぐりとぐら』という絵本をご存じだろうか。


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「ぐりとぐら」は日本を代表する絵本の一つであり、出版されてから四十年以上たった今でも読み継がれている名作である。

私と「ぐりとぐら」との出会いだが、正確にいつ初めて読んだか覚えていない。

物心がついた時にはもう知っていたような気がする。

この本は1967年に初版が発売され、2012年6月時点で第192版まで出ている。

これだけ売れている本である、もはや桃太郎と同格といっても過言ではない。

ぐりとぐらはシリーズ化され、現在多くの種類の絵本があるが、今回は第1作目の『ぐりとぐら』を考察することにした。

 

基本的なあらすじ

この本を読んだことのない人のためにこの絵本のあらすじを紹介する。

この絵本は

「料理をすることと食べることの大好きな野ねずみのぐりとぐらは森にどんぐりと栗を拾うためやってきた。そこで巨大な卵を見つけたので鍋を持ってきて大きなカステラを作って、森の仲間たちに気前よくふるまい、残ったたまごの殻で車を作った」

という話である。

 

1、ぐりとぐらの生態

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ぐりとぐらの基本的な紹介が冒頭でされている。

「ぼくらの なまえは ぐりと ぐら このよで いちばん すきなのは おりょうりすること たべること ぐり ぐら ぐり ぐら」

ねずみは1日に自分の体重の何倍もの食糧を食べ、常に何かを食べないと餓死してしまうのである。

この2匹の好きなことは2つとも食に関することだが、これはねずみの生態として正しいと言える。

この可愛らしい外見の内側にある野生の本能をこの紹介文から読み取ることができる。

ところで、気になるのがこの二人の関係についてだ。

この2匹は一緒に暮らしているが、この2人がどういった関係にあるのかまでは言及されていない。

そこで3種類の仮説を立ててみた。

1、兄弟(姉妹?)

2、友達

3、夫婦

1の仮説は結構ありそうだ。

「のねずみのきょうだい ぐりとぐらは ふたりなかよくくらしています」

とあっても違和感はない。

ただ、兄弟にしては仲が良すぎるような気がしないでもない。

兄弟だったら喧嘩の一つや二つしそうなものだが、私がぐりとぐらシリーズを読む限りではそんな描写はなかった。

2の仮説だが、友達同士で暮らすことは絵本の世界ならよくありそうなことだ。

1の仮説と同様信頼できそうな仮定だ。

さて、3の仮定だがこれはこれでありそうなのだが、この2匹の性別は絵本の中でははっきりしていない。

同じシリーズの別の本だが「ぐりとぐらのかいすいよく」では二匹が海で泳いでいた。

ここで海パンでもはいていたら男だと断言できたのだが二匹ともランニングシャツに短パンという格好で泳いでいたので結局性別は不明のままに終わった。

一番ありそうなのは2かもしれない。

 

 

2、いったいどこの森だ?

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この絵本の舞台は森である。

しかし、どこの国のどの地方の森かまでは書かれていない。

そこで、登場する森の動物からぐりとぐらの住んでいる地方を予想してみようと思う。

この絵本に出てきた動物は、

ねずみ、ライオン、オオカミ、ウサギ、小鳥(種類は不明)、フラミンゴ、ミミズク、熊、ゾウ、モグラ、リス、カメ、アカハライモリ、ヤマアラシ、鹿、蟹、かたつむり、イノシシ、ワニ、カエル、へび

の合計二十一種。

うさぎやイノシシぐらいなら日本にもいるが、ライオンやゾウがいるのだからここは日本ではないのだろう。

これだけの種類の動物が一緒に暮らしている地域なんてないのではないかと考えていたが、調べるうちにアフリカ大陸がそうでないかという結果が出てきた。

アフリカには、ライオンやゾウ、フラミンゴはもちろんのこと、アフリカマイマイ(かたつむり)やアフリカミミズクといった生物も存在するのである。

 

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ただ、残念なことに熊だけはアフリカ大陸に生息していないことが判明した。

たぶん彼は最近になって北半球から引っ越してきたのだろう。

 

 

3、正体不明の巨大たまごの謎

本当にでかいのか?

この絵本の肝といえばなんといってもこの巨大なたまごである。

ありえないほど巨大なたまごで巨大なかすてらを作るというところに一種のロマンを感じる。

「巨大である」ということは子供たちの心をつかんで離さない要素のの一つである。

このたまご、実際どのくらい大きいのだろうか?

ぐりを基準に計ってみるとその大きさはなんと高さぐり一匹分横幅ぐり二匹分にも及ぶ!

しかし、よく考えたらこのたまご、思っていたほど大きくないのではないか。

「高さ1匹分横幅二匹分にも及ぶ!」なんて大げさに書いたがたかだねずみである。

ハツカネズミの体長は2㎝くらいであり、もっと体の大きいドブネズミでも3~4㎝である。

「高さ1匹分横幅二匹分」というのはつまり「高さ約2.5㎝、横幅約5㎝」である。

これでは普通にスーパーで売ってる鶏のたまごではないか。

確かにねずみと比べればでかいことは確かだが、巨大たまごとは言い難い。

 

鶏のたまごでカステラを作ったってロマンのかけらもない。

幼いころの夢をぶち壊された気分になったが、読み進めてみると新たな事実を発見した。

 

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森のみんなとたまごカステラの完成を待つシーンでぐりはうさぎと肩を組んで並んで座っている。

なんとぐりの体の大きさはうさぎほぼいっしょなのである。

私はとんでもない勘違いをしていた。

たまごが小さかったのではなく、ぐりとぐらが大きかったのだ。

さて、うさぎの体長だが小型のうさぎでも20㎝はあり、うさぎの中でも最も大きいヤブノウサギだと50㎝以上ある。

絵本のうさぎの体長が30㎝くらいだと仮定するとたまごの大きさは「高さ60㎝、横幅1m20㎝」である。

これならダチョウのたまごよりも大きいはず。

 

 

このたまごが内包する危険性

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このたまごの大体の大きさは予想できたので、このたまごの素性について考えてみる。

このたまご発見したときの二人のセリフは、

「やあ、なんて おおきな たまごだろう。おつきさまぐらいの めだまやきができるぞ」

「ぼくらの べっどより、もっと あつくて、ふわふわの たまごやきが できるぞ」

であった。

「こいつら思ったほど驚いてないな」というのが率直な感想である。

巨大なたまごが落ちていることが珍しいけど日常的にあり得るかのような反応であり、例えるなら「宝くじで一万円当たった」程度の反応である。

せめて持っているカゴを思わず落としてしまうくらいの反応は見せてほしいものだ。

だが、私がもっと気になったのは、こいつらがたまごを「食うこと」を前提に話を進めているということだ。

これがたまごである以上それを生んだ誰かが存在する。

この2匹は「このたまごを生んだ誰かが、このたまごをうっかり落としてしまって、今探している」ということが想像できなかったのだろうか。

「私のたまご知りませんか?」などと言うやつは絵本出てこなかったが、この事件のあとぐりとぐらの家にたまごの母が訪ねてきた可能性もある。

「さ、さあ……そんなたまご知らないよ。な、なあぐら」

「う、うん……そんな大きなたまごなんて知らないよ……」

などと汗をたらたら流しながら答えていたのかもしれない。

みんなでカステラを食べているときフラミンゴが一羽いたが、もしそいつが「あ、それわたしの……」なんて言いだしていたら……考えるのも恐ろしい話である。

だがもっと恐ろしいことの起こる可能性もあった。

少し昔の話をする。

私の通っていた小学校には鶏小屋があった。

そして、そこの鶏の産んだ卵を使って調理実習で目玉焼きを作ることになった。

家庭科の先生はまずお手本としてみんながみている前で卵を割って熱したフライパンの上に落そうとした。

しかし、中から出てきたのはたまごではなくなんとまだ成長途中の鶏の胎児だったのである。

このたまご、まだたまごの状態だったからよかったが、実は育てている途中で中身が鳥の胎児とかだったらどうするつもりだったのだろう。

さらに、さらに恐ろしいことが起こる可能性があった。

それは食中毒の可能性である。

「ある日道を歩いているとたまごが落ちていたのでひろって食べる」なんて普通ならしない。

痛んでいる可能性があるからだ(痛んでいなくてもふつう拾わないし食べないが)。

たまごなんて痛みやすい食べ物なのだから外にほったらかしにしておいたらすぐに腐ってしまいそうである。

正体不明のたまご(常温保存)でカステラを作るとはあまりにも危険である。

まあ、過熱しているし、

「よし!このたまごでたまごかけごはんをつくろう!」

と言い出さなかっただけましと言えるかもしれないが。

 

 

たまごの殻で作った車

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この絵本の最後のページをみるとぐりとぐらが何かに乗っている。

この二人は残ったたまごの殻で車を作ったようだ。

さて、この車だが、動力は何であろうか。

普通の乗用車はガソリンを燃料とするエンジンが動力だが、この二人にエンジンを備え付ける技術なんてあるのだろうか。

一応手先は器用なようだが、自動車整備士みたいなまねはできないだろう。

となると、スワンボートみたいに足漕ぎで動くようになっているのかもしれない。

しかし、鍋等の荷物に加え、ウサギ並みにでかいネズミが2匹乗っている車を足で漕ぐなんて相当大変なのではないだろうか。

絵本では涼しい顔をしているぐりだが、実は水鳥のごとく水面下では足を必死に動かし続けているのかもしれない。

 

 

 

まとめ

さて今までの考察をまとめてみると、

 

・二匹の関係は友人

・二匹がすんでいる地域はアフリカ

・熊は引っ越してきた。

・たまごの大きさは「高さ60㎝、横幅1m20㎝」

・たまごの殻で作った車は足こぎで動く

 

となる。

 

ここまで、散々「ぐりとぐら」を考察してみたが、実際は考察というより妄想のほうが正しい。

しかし、妄想の余地が残されているということは絵本にとって大切なことである。

妄想の余地とは謎とつじつまの合わなささであり、それに疑問を持ちあれこれ想像することは子供の創造性を育てるからである。

この絵本の妄想の余地を取り払ってしまい、

「アフリカ大陸にある森にぐりとぐらという仲の良いねずみがすんでいた。あるときドングリと栗を拾っているとダチョウがあらわれて、『無精卵ですけどよかったら食べてください』と大きさ「高さ60㎝、横幅1m20㎝」のたまごをくれたのでカステラを作って森のみんなと食べることにした。その時まだ森に引っ越してきたばっかりの熊さん(本来アフリカには熊は生息していない)が『このたまご食べて当たったりしない?』などと心配したが『十分に加熱しているから大丈夫だよ』とぐりが答えたので安心して、出来上がったカステラをおなかいっぱい食べた。残ったたまごの殻で足で漕ぎで動く車を作ったが思ったより足にきたので乗り捨てて帰りましたとさ。おしまい」

とかいう内容にしたら,ただのねずみの観察日記に成り下がってしまう。

絵本はあれこれ想像できるから面白いのである。

 

 

 

 

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ニシカゲ

陰の者



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