鴨川スタンド・バイ・ミー ~台風で流されたヌートリアの死体を探して~

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鴨川スタンド・バイ・ミー ~台風で流されたヌートリアの死体を探して~ (合同記事)


あの時のような友だちを、二度と持つことはできない。誰だって…。


 

私が初めてヌートリアの死体を見たのは、やがて13歳になるという12歳のときだった。2013年の出来事だった。はるか昔のことだ……わたしにとっては、それほど長い年月がたったとは思えないときもあるが。特に、死体の目に雹が降っている夢を見て、目ざめてしまう夜中などには。

 


 

 

ある日、俺達が床下にうめた貯金箱を探している時に、兄と不良仲間の噂話を盗み聞きしたんだ。
それは一週間前に京都を襲った「台風18号」のせいでブルーベリーを食べに出たきり行方不明になったヌートリアが溺死し、その死体を出町柳駅から5キロ以上先の鴨川の下流で見つけたという話だった。
しかし、兄と不良仲間は盗んだ車でそれを見つけたため、名乗り出るわけにいかなかったのだ。
さっそく俺達は自分たちが先にヌートリアの死体を探し出そうと、その日の昼過ぎに街を出た。

 

 

 

 

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「この鴨川の下流にヌートリアの死体があるはずだ。それを俺達で見つけて人気者になってやろうぜ!」

「ああ!」

 

 

 

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「しかし、ひどい有様だな。川端の草木がことごくなぎ倒されてやがる……。それほどまでにこの前の台風の影響はでかかったというのか」

 

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「まったくだ。このあたりも普段は草木の緑が美しいのにな……」 

 

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「見ろよ。河川敷に木が打ち上げられてやがる……」

「ああ」

 

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「おい、あれは何だ!? ヌートリアの死体か!?」

 

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「いや、違う。あれは突き刺さってる棒に上流から流されてきた草木が引っ掛かったやつだ」

「ちっ! ヌートリアの死体じゃあねえのかよ」

 

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「あの方角にヌートリアの死体があるのだろうか……」

「さあどうだろうね……」

 

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「あれは! まさか、ヌートリアの死体か!?」

「いや、違う。あれは鴨の群れだ」

「ちっ! ヌートリアの死体じゃあねえのかよ」

 

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「激流だな……」

「こんなところにヌートリアが入ったらひとたまりもないだろうぜ……」 

 

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「この草木の中にはいないだろうか」

「さあどうだろうね……」

 

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「そっちの中州みたいなスペースにはいたか?」

「いや、ここにはいないみたいだな」

 

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「……おい。これを見てくれ」

 

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「このくぼみ……ヌートリアの足跡に見えないか?」

「さあどうだろうね……」 

 

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「ちくしょう! 出町柳から二条大橋まで歩いてきたってのに、全く手がかりがないじゃないか」 

「まだ時間はあるさ」

 

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「このくぼみ……ヌートリアの足跡に見えないか?」

「さあどうだろうね……」 

 

 

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「まずいな……日が傾いて来やがった」

「まだまだ三条大橋だ。先は長いぜ」

 

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「おい、どうしてあの高さに草木がへばりついてるんだよ」

「台風の時はあの高さまで水かさがあったんだろうな」 

 

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「激流だな……」

「こんなところにヌートリアが入ったらひとたまりもないだろうぜ……」 

 

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「おい! そっちにはいたか!?」

 

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「いや、いないぜ。そっちはどうだ?」

 

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「こっちにもいねえよ……。ちくしょう、一体どこにヌートリアの死体があるってんだ!」

 

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「そう腐るなよ。探し続ければきっと、ヌートリアの死体は見つかるだろうさ」 

 

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「四条大橋の近くまで来たが、このあたりの被害は大きいな……」 

 

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「激流だな……」

「こんなところにヌートリアが入ったらひとたまりもないだろうぜ……」 

 

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「見ろよ! あんなにでっけえ大木が流れ着いてるぜ!」

 

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「こっちもだ! それだけ先週の台風は被害が大きかったということだろうな……」 

 

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「ちっ! もうじき日が暮れちまう。はやいところ、ヌートリアの死骸を見つけねえと……」 

 

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 「普段、河川敷に立っている鉄製の看板まで流されてるぜ……」

 

 

 

 

 

「おい! あれを見ろ!」

 

 

 

 

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 「小魚の死体だ!」

 

 

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「何だこれは……」 

 

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「あっちにもこっちにも、いたるところにありやがる……」

 

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「鳥の羽もたくさんあるぜ……。おそらく、台風で魚だけでなく、たくさんの鳥たちも……」 

「……」

 

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「今、俺達にできることはヌートリアの死体を探すことだけだ……。この小魚や鳥のためにもヌートリアの死体を探さなくっちゃあな」

「ああ……」

 

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「あそこにいるんじゃないのか?」

「さあどうだろうね……」 

 

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「五条大橋まで来ても、まだ見つからない。本当にヌートリアの死体なんてあるのだろうか……」 

 

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「もう、日が暮れちまう……」 

 

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「このくぼみ……ヌートリアの足跡に見えないか?」

「さあどうだろうね……」 

 

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「くそっ! ヌートリアの死体め! 出てきやがれ!」 

 

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「ああ……もう、日が沈む……」 

 

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「結局、七条大橋まで来ちまったか……」 

 

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「駄目だ! 流木で道が塞がれてる! これ以上先に進むことはできないみたいだな……」 

 

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「ちくしょう! ちくしょう! 俺は悔しいぞ! ヌートリアの死体ひとつ見つけられないなんて……」

「そう自分を責めるな。まだチャンスはあるはずだ……。盗み聞きした噂話によると、ヌートリアの死体があるのは出町柳駅から5Kmほど下ったあたり、つまりこの周辺のはずだぜ!」 

 

 

 

 

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「うげっ! 体中、いたるところにヒルがへばりついてるぜ!」 

 

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「うわあっ! こっちもだ!」 

 

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 「ひいっ!」

 

 

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「むう、気を失ってしまったみたいだな……。結局、ヌートリアの死体を見つけることはかなわなかったか……」 

 

 

 

「ん?」

 

 

 

 

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 「あっ、あれは!!!!!!!!!!!!!!!!」

 

 

 

 

 

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「ヌートリアの死体!!!!!!!!!!!!!!!」

 

 

 

 

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「ピクリとも動かないし、目にも生気が無い。間違いない、これはヌートリアの死体だ! やったな!」

「ようやく、俺達の努力が実を結んだみたいだな!」

「この話をラジオに投稿すれば人気者間違いなしだぜ! ひゃっほう!」

 

 

 

 

 

「その死体をこっちへ渡してもらおうか……」

 

 

 

 

 

 

 

「お前はっ……!」

 

 

 

 

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 「兄貴の不良仲間のひとり!!!!!」

 

 

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「てめえら、その死体は元はと言えば俺達不良仲間が見つけた物だろうが! さっさとこっちによこさねえとこのナイフで切り刻んでやる!!」 

 

 「うぅ…痛いのは嫌だ…! どうすれば……」

 

 

 

 

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「あぁん!?」

 

 「ちくしょうっ…!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドン!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「ふざけんじゃねえ! これは俺達が死に物狂いで見つけたヌートリアの死体だ! 誰がお前なんかに渡すかよ! 親父からくすねてきたこの銃で撃たれたくなけりゃあとっとと帰りやがれ!!」 

 

 

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 「ひぃっ!」

 

 

 

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「おぼえてろよ! てめえらっ!」 

 

 









 

 

 

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こうしてわたし達は台風18号で流れ去ったヌートリアの死体を見つけることに成功した……。

 

 

わたしは今でも時々、あの時のことを思い出す……。

 

 

左手を見ると、今はもう川幅が狭くなっているが、少しは水がきれいになった鴨川が、河原町と出町柳を結ぶ橋の下を流れているのが見えた。上流のトレッスルはなくなったが、川はまだ流れている。

 

そしてわたしもまた、そうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

※近年、飼育されていたヌートリアの違法な放逐、野生化した種の野外繁殖による環境破壊が問題となっています。

日本では侵略的外来種として問題になっており、イネやオオムギ、葉野菜などに対する食害のほか、絶滅危惧種に指定されているベッコウトンボの生息地を壊滅させるなど、在来種の生態系への影響も深刻となっています。さらに、本種の巣穴は複雑に入り組んでいて深く、水田の畦や堤防が破壊される原因にもなっており、住宅の庭先への侵入や漁網を食い破る被害も少ないながら発生しています。

2005年6月には、特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律(外来生物法)によって特定外来生物に指定されており、50を超える地方自治体が同法に基づく防除計画を策定しています。兵庫・島根・岡山の3県では2005年度に4500万円を超える被害に遭い、約3000頭を駆除しましたが、個体数の減少には至っていません。
以上のことから、実際にヌートリアの死体などを発見した場合は、伝染病を媒介している恐れなどもありますので、決して手に取ったりすることなく、保健所のような然るべき機関に連絡し、対処していただくようお願いいたします。

 

 

 

 

 


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ナルヒラ

ピエロと墓荒らしにご挨拶


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ニシカゲ

陰の者

 



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