春の七草全部見つけるまで帰れま7! (ニシカゲ)
果たしてニシカゲは春の七草すべてを、普通の山で見つけることはできるのか!?
・・・1月6日
「こんにちは、ニシカゲさん。
今日は1月6日ですが、明日1月7日といえば何が思い浮かびますか?」
「さぁ…」
「1月7日といえば七草粥に決まってるじゃないですか!
春の七草を刻んでお粥に入れ、邪気を払うために食べる。
これはもう日本の伝統ですよ!」
「なるほど、それが何か…?」
「というわけでひとまず行きましょう」
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「はぁ…はぁ…
なんでいきなり山に登るの!?」
「明日は1月7日、ということで今回の挑戦は…
です。
ルールはこの山で春の七草を全部見つけるまで家に帰ってはいけない、の一つです」
「何それ、もうすでにしんどいのに…」
「現在の時刻が午後3時ですから、早くしないと日が暮れてしまいますよ!」
「ちなみに春の七草はセリ、ナズナ、ゴギョウ、ハコベラ、ホトケノザ、スズナ、
スズシロの7つです。さぁ、がんばってください!」
「はぁ…一応登りながら探すか…。けどこんな山に七草が全部あるのか…?」
「信じる者は救われるとも言いますし、信じて頑張りましょう」
「…」
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30分後
「はぁ、はぁ…」
「どうですかー!ありましたー!?」
「はぁ……ない…」
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さらに30分後
「どうですかー!!見つかりましたー!!?」
「うるせえ!!!こんな山に七草なんかひとつもねえよ!!!!」
「まぁまぁ…落ち着いて…」
「もう脚も疲れたし喉も渇いた…」
「あ、そこに水が湧いてますよ」
「ホントだ…」
ゴクゴク…
「ふう…」
「はぁ、行くか…」
「おぉ」
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20分後
「あ、これ!!」
「お、見つけましたか!?」
「これハコベラじゃない?ハコベラだよこれ!!!!」
「いや、たぶん違うんじゃ…」
「やったーーーー!!!!!!」
(こんなに嬉しそうだしな…)
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10分後
「あ、これ!」
「なんでしょう」
「これナズナだよナズナ!!!」
(これも違うと思うけど…)
(こんなに笑顔だしな…)
「少しずつ暗くなってきましたね…」
「あ!」
「また見つけましたか?」
「これセリだよ!セリ見つけた!!」
(・・・・・・)
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「あの…今さら言うのも何なんですが…やっぱりそれじゃあ駄目じゃないかと…
今までのも多分七草なんかじゃないでしょうし…」
「あ!!?うるせえな!!!そんなんこっちだって分かってんだよ!!」
「だいたいスズナとかスズシロなんかはカブとかダイコンだろ!?
そんなんがこんな山に勝手に生えてるわけがないだろうが!!」
「まぁまぁ…」
「もう知らん!!!」
「あ、ちょっと待ってくださいよ!」
「あぁ…どこに行ってしまったんだ…」
「これは本格的に暗くなってきたぞ…。早く見つけないと…」
「ニシカゲさーん!!」
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ん・・・?
「あ、あれは…」
「ニシカゲさんが見つけていた雑草だ!!!
ということはこの近くに…」
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「あ、あれは!!!!」
「もしかして・・・ニシカゲさん!
ニシカゲさーーーん!!
僕です、聞こえますかー!!!」
「こちらを向いた…!
やはり、ニシカゲさんなのか…!」
ガサガサッ!
「あっ!」
「く…行ってしまった…
もうニシカゲさんには会えないのか…」
・・・それから一時間近く捜索を続けるも結局、ニシカゲさんは見つからなかった。
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ますます、辺りは暗くなっていった。
木の間を伝って、何処からか、獣声が哀しげに響き始めた。
慟哭の声が聞えた。
私は、先程の林間の草地を眺めた。
忽ち、一匹の虎が草の茂みから道の上に躍り出たのを私は見た。
虎は、既に白く光を失った月を仰いで、二声三声咆哮したかと思うと、
又、元の叢に躍り入って、再びその姿を見なかった。
ニシカゲは、山に帰った。
陰の者