つい先日、新しい取引先の方と初めてお会いした。その時にご多分に漏れず名刺交換をしたのだが、その若い男性は私に、例の長方形の白い紙ではなく、大根を手渡してきたのだ。
こんなこと今まで一度もなかったぞ・・・。こっちが五十手前のオヤジだからって馬鹿にしてるのか・・・?と思ったのもつかの間。その青年は少しはにかんだ笑顔で「それ、僕が育てたんです」と言うじゃないか。「名刺代わりってやつですかね」と彼は続ける。
大根を受け取り観察してみると、黒マジックで大きくその青年の名前が書いてあった。
「大丈夫、ちゃんと油性で書きましたんで!」と屈託のない笑顔で彼は言う。確かに、それなら名前が消えてしまう心配はないが、料理には使えないのではないか。
私が困ったような顔をしていると、彼は「さっき収穫してきたばっかりなんで、まだ地面に植えなおせば育ちますよ!」とアドバイスをしてくれた。助言通り、その大根は実家の庭に植えることにした。
翌週、立派な花が咲いた。